「反対意見」と「自己防衛」の違い

from【院長 金丸】



私が勤務医だった頃、勤め先の院長がマネジメントに困っていた歯科衛生士がいた。

具体的に言うと、患者さんへの対応をアドバイスしてもなかなか改善案を受け入れてもらえなかった。

医院で新しい取り組みを始めたり、新しい医療を導入しようとすると、決まって彼女から反対意見が出た。

院長も毎回こういった反応をする彼女に疲れてしまっていて、最終的にはコミュニケーションが疎遠になっていった。

2年ほど勤めたのちに彼女は退職してしまったが、あの感じのままだとどこに就職しても難しいのではないかと思う。

こういう人は、アドバイスをしても、

「いや、、」

「でも、、」

「それをしてしまうと、、、」

みたいな返事が瞬時に出てくる。

こういう人は、どれだけ良いアドバイスをしても受け入れることができない。

もちろん、これは

「反論してはいけない」

という意味ではない。

いつもみんなには言っているけど、自分自身の「答え」の精度を上げるため、「最適解」を出すためにも反対意見はとても大事だ。

裁判で裁判官が犯罪者の弁護士の意見を聞くのも、反対意見を聞いて判決の精度を高めるためでもある。

反対意見はとても大事だ。

ここで私が言いたいポイントは「瞬時」に反論が出てくるという点。

これはつまり、アドバイスや情報を

「受け入れて、理解して、考える」

ということをしている訳ではなく、

ただ単に、

「自己防衛」

しているにすぎない。

大抵のケースでアドバイスというものは、当人のやっている事をもっと違ったやり方でやればもっと良くなるとか、今のやり方ではダメだとか、当人の行為を多少なりとも否定する部分が入る。

その場合、セルフイメージや自己評価が低い人は、

「私は攻撃された」

と感じる。

「私は今、○○さんに攻撃されたので防衛しなければいけない」

アドバイスに対してこういう捉え方をしているのではないだろうか。

人間は、周りから

「私は正しいと思われたい」

と考えている。

そういう心理もあって、何か自分のやっている事を少しでも否定されるとその真意を理解しようとするのではなく、「防衛」し、場合によっては「攻撃」もする。

みんなにも分かってほしいと思うけど、成長や変化というものは、根本的には、

「今の自分のままではいけない」

という所からスタートするものだ。

自己否定ができないのは、恐らく低いセルフイメージ、自己評価が原因。

セルフイメージの高い人は、自分の行為を否定・批判された所で、自分の人格を批判されたとは思わず、自分の行為と、自分の人格を切り離して考えることができる。

そして、相手の言うことの真意を理解して、それが妥当であれば受け入れ、妥当でなければ「なぜか?」ともっと質問することだろう。

そして、最終的に違うと思えばそのアドバイスを採用せず、納得すれば採用して、自分の行動を変える。

これが成長する人なんだと思う。